A FAMILIAR FACE, ANOTHER STORY
ミコシリーズ
初めての店も、電話一本も、ミコには大事件。頭の中の五人と大騒ぎしながら、日常の小さな一歩を踏み出す連作短編です。
各話は読み切りです。第1話から順に読むと、登場人物の小さな変化も楽しめます。
第1話から読む 25話公開中・各話の読了目安つき
シリーズの物語
第1話から順に並んでいます
ドアひとつぶんの全員会議
怖いまま、ドアだけ開けてみる。
この話を読む三ヶ月ぶりの戦場
美容室は、ミコにとって小さな戦場だった。
この話を読む三週間目の、白い待合室
病院に行くだけで、今日は大勝利。
この話を読むミコ、忘年会の幹事になる
頭の中は大混乱。でも、幹事は待ってくれない。
この話を読む電話が怖い、コートが大きい
電話一本が、コートよりずっと重かった。
この話を読むインターホンまで、三歩半
隣の部屋まで、三歩半。いちばん遠い三歩半だった。
この話を読む目的地まで、あと二つ
道は知っている。足が知っている。口が知らない。
この話を読む二人一組の、みじん切り
隣の包丁が速すぎて、わたしの仕事がなくなっていく。
この話を読む教える係は、教わる顔をしている
十二ページの手順書に、いちばん大事な一行が書いてなかった。
この話を読む試着だけで、帰っていい
「似合ってます」に「ありがとうございます」と言うたび、買う人になっていく。
この話を読む「どこでもいい」の、つづき
「どこでもいいよ」と返したら、候補が七つになって返ってきた。
この話を読むその写真には、わたしもいる
「撮るほうが落ち着く」も、本当だったけど。
この話を読む勝ちたいって、言っていい
「すみません」と言ったけど、すみませんとは、少しも思っていなかった。
この話を読む手加減しないって、言ったから
予習してきたゲームで負けて、知らないゲームで勝った土曜日。
この話を読むタンバリンは、まだ鳴らない
鳴らさないあいだも、曲はちゃんと進んでいる。
この話を読むマイクは、まだ返さない
間奏は、飛ばさない。
この話を読む今日は、何もしない予定です
何もしない日は、思ったより忙しい。
この話を読む当日券は、一枚で
見えない象に、いちばん大きな拍手を。
この話を読むミコ、値札をつける
「相談」と書いたら、本当に相談されました。
この話を読むお花見は、座ってから
桜、日なた、平らな地面。条件を増やすほど、お弁当が遠くなる。
この話を読むミコ、ボウリングで待つ
すぐ投げたい人と、考えすぎる人。待つほうにも勝負がある。
この話を読むミコ、鉢をひとつ買う
置けるのは、二十センチ。花も葉っぱも欲しいけれど。
この話を読むミコ、駅弁を二つ見る
予定の鯛めしと、窓の景色と食べる一箱。
この話を読むミコ、夜の動物園へ
寝ている動物の前で、いちばん張り切るのは頭の中のネムイ。
この話を読むミコ、ひとりで泊まる
千五百円ぶんの海と、二つの籐椅子。
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