A FAMILIAR FACE, ANOTHER STORY
坂の上シネマ
海の町の小さな映画館で、売店係の灯が出会う人と映画と、塩味のポップコーン。上映の前と後にも続く、温かな連作短編です。
各話は読み切りです。第1話から順に読むと、登場人物の小さな変化も楽しめます。
第1話から読む 13話公開中・各話の読了目安つき
シリーズの物語
第1話から順に並んでいます
ポップコーンは、塩から
映画館の売店に入ったばかりの灯は、自分の大好きな「スパイス黒糖」で人気投票に勝つつもりだった。
この話を読む最前列に、だれも座らない
予約帳には親子の名前。映写室の窓から見下ろす最前列には、だれもいない。
この話を読むエンドロールの、つづき
四十三年通った映画館の案内役。持ち時間は五分。話したい思い出は、便箋八枚ぶんあった。
この話を読むひよりの席は、まだ決まらない
「わたしの席」だと思っていたのは、わたしだけだった。
この話を読む同じ映画で、笑えなくても
いちばん好きな映画で、となりの人は笑わなかった。
この話を読む休館日の、試写会
休館日の客席で、映写係の腰が何度も浮く。
この話を読む二枚目の、半券
姉が覚えていたのは、麦茶二杯とラッパの音。
この話を読む怪獣役は、じゃんけんで
十二センチの怪獣より、映画館のほうが大きかった。
この話を読むパンフレットは、二冊とも
先に読む人と、観てから読む人。最後の場面が、食い違った。
この話を読む売店係は、パンを買いに
休館日の売店係は、パンを一本買いに行くだけ。寄り道をしなければ。
この話を読む赤い手袋が、二つとも右
忘れ物箱の「一組」は、どちらも右手でした。
この話を読むひより、招待券を持つ
誘ったのは、わたし。なのにお父さんは、ずっと上を見ていた。
この話を読む河合さんは、踊らない
踊りたくない。でも、足が勝手に三拍子。
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